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その他コラム

キッチン王国 旅立つメルの物語

公開日:2025年07月18日
更新日:2025年07月18日
その他コラム

【おはなし】


キッチン王国に朝の光が差し込むころ、重曹のメルは静かに目を覚ました。
だれもが眠っているまだ薄暗い時間。けれどメルの心は騒がしかった。

「ぼく…旅に出るよ」

前の戦いで現れたサビールとの戦いは、メルにひとつの気づきをもたらしていた。
――自分の力だけでは、世界すべての汚れと戦えない。
だからこそ、もっと知りたい。もっと強くなりたい。

「カビッシュ、コーソン、お世話になりました」
メルはふたりの親友が寝ているそばに、小さな手紙を残した。

 ぼくは旅に出ます。
 世界にはまだ、知らない汚れがある。
 新しい仲間や、新しい知識が必要です。
 必ず、強くなって帰ってきます――メル

手紙をそっと置くと、彼は静かにキッチン王国の門をくぐった。
そこから先は、未知の世界。シンクの外、冷蔵庫の裏、そしてその先――「棚の果て」と呼ばれる場所へ。

メルが最初に向かったのは、コンロの奥に広がる「焦げの谷」。
そこには、黒く硬い「コゲロン族」が住んでいると言われている。

「よそ者が来たぞ!」
「重曹?そんな粉が、ここで何ができるってんだ!」

谷に入ったメルは、さっそく試される。
そこに現れたのは、頑固なコゲロン長老・グリム。

「おまえに、この谷の黒焦げを落とせるか? ただの粉では、ムリじゃぞ」

けれど、メルは笑って言った。
「やってみなきゃ、わからないでしょ」

彼は水の精・ミズーナにもらった水滴の石を使い、優しく焦げを湿らせた。
そして静かに、くるくると自分をなじませ、円を描くように働いた。

――しゅわっ。

「……!? 焦げが、やわらかくなっていく……」

驚くコゲロンたちの目の前で、長年こびりついていた黒焦げが、少しずつ剥がれていく。
焦げは、怒りでも力ずくでも落とせない。時間と工夫、そして優しさが必要だった。

「重曹の力…いや、おまえの努力、見せてもらったぞ。旅人よ、礼を言う」
長老グリムは、固い手でメルの肩を叩いた。

焦げの谷を後にしたメルは、少しずつ世界を巡り始める。
その途中、油の国では「ヌルル王子」と出会い、
冷蔵庫の影では「霜の魔女シモーナ」とも対話を交わした。

それぞれの出会いが、メルの心と力を成長させていく。
――けれど、遠く離れたキッチン王国では、再び不穏な空気が立ち込めていた。

サビールが、再び動き出したのだ。
「クエンとメルを失ったこの国…もはや私を止められる者などいまい」

そのころ、メルは知らない土地でひとり、夜空を見上げていた。

「きっと今ごろ、みんなは寝てるよね」
「でも、ぼくは進むよ。だって――」

「どんなに遠くても、一歩ずつなら、きっとたどり着けるから」

キッチン王国の空にも、遠く旅するメルの空にも、同じ星が瞬いていた。

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