重曹とキッチンのひみつ ~再びの大そうじ~
更新日:2025年06月24日 その他コラム
【おはなし】
あれから、キッチン王国は笑い声とキラキラした輝きで満たされていました。
重曹のジョウソウも、棚から飛び出して毎日、仲間たちと共にキッチンを守り続けていました。
でもある夜、再び不穏な影がキッチンをおおいました。
それは、湿気とカビの怪物「カビルン」が、静寂の奥からやってきたのです。
「ヒヒヒ……今度は湿気も一緒だ!どんな力も、じめじめとした僕には通じないよ!」
カビルンの笑い声が、タイルの隙間から響きわたります。
瞬くうちに、白いタイルの目地が、どす黒い色に侵されていきました。
「大変だわ!カビルンがやってきたわ!」
クエンが、声を張りあげました。
「僕たちで、止めるしかない!」
そう言って、ジョウソウは身を乗り出しました。でも、カビルンのまとわりつく湿気が、彼の粉を固め、力を奪おうとします。
「うっ……身動きができないよ…」
「ジョウソウ!!」
クエンが悲鳴をあげ、スポンジたちも固唾を呑みました。
そのとき、換気扇の奥から声がしました。
「まだ終わっちゃいないぜ、ジョウソウ!」
それは、換気扇の奥で力を蓄えた『ハッカの精』ミントでした。
「僕の爽やかな風なら、湿気を吹き飛ばせる!一緒にやろう!」
吹き抜けるミントの風が、ジョウソウの固まりをさらさらとほどき、彼の力を蘇らせました。
「よし、僕もやるよ!クエン、スポンジさん、みんなも一緒に!」
ジョウソウ、クエン、ミント、そしてスポンジたちが力を合わせ、カビルンへ立ち向かいました。
クエンの酸、ジョウソウの粉、ミントの風、スポンジの優しい撫で、すべてが一緒となり、暗い影を次々と吹き飛ばしていきました。
「や、やめろっ!僕のじめじめがぁぁぁぁ!!」
カビルンは、ついに力尽き、きれいなお湯となって排水口へ消えていきました。
後には、輝きを取り戻したタイルと、爽やかな香りだけが残りました。
「やった!僕たち、できたよ!!」
「そうよ!一緒なら、どんな暗闇も吹き飛ばせるのよ!」
ジョウソウたちは互いに笑いあいました。
その笑い声が、キッチン中にこだまします。
その夜、キッチン王国の片すみに、小さな声が響きました。
「僕たちは、ただの粉や水滴や風じゃない。力を合わせれば、どんな困難も乗り越えられる。たとえ姿が小さくても、心が大きければ、できないことなどないのだから。」
こうして、キッチン王国は、再び平和を取り戻したのです。
(おわり)